空手の永遠のテーマ「一撃必殺」。
一発で相手を倒す。
カッコイイですよね。
「一撃必殺」という言葉に憧れて空手を始めた人もいるのではないでしょうか。
空手に携わらない人でも、聞いたことがある人もいるかもしれません。
私も、空手のひとつひとつの技の威力を上げるために日々研究し、稽古に励んでいます。
皆さんは「突き」の威力を上げるにはどうしたらいいと思いますか。
私ブラクロが提案することは、「質量(重さ)」を使うことです。
一つの手法ではありますが、この記事を読む方の突きを強くするための稽古の参考にしていただければ幸いです。
目次
威力を上げるには、運動エネルギーを上げる
突きの威力を上げるためには、突きの運動エネルギーを強くする必要があります。
運動エネルギーとは単純に表現すると、
質量×スピード
と表すことができます。
分かりやすくするために、ここでは質量を「重さ」と言い換えて表現をしていきます。
専門的な物理の理論や、物理の難しい公式を見つめながら眠ってしまってもいけませんので(笑)
仮に突きの「スピード」が同じであれば、突きの「重さ」が大きいほど運動エネルギーを大きくすることができます。
ボーリングのピンに向かってボーリング玉とピンポン玉を同じ図ピードで転がしたときに、たくさんのピンを倒すことができるのはどちらなのかは誰にでも予想できることだと思います。
軽いものよりも重いものの方が運動エネルギーを大きくすることができます。
(スピードという概念は、別の機会で紹介していきます)
重さを使う
人間という「体の重さ」を使うことは意外と難しいものです。
例えば、腰に構えた拳を「筋肉の力」だけで押し出すと、「拳という面だけを動かしている状態」になりがちです。
拳という面が移動しているので「スピード」は得られていますが、「重さ」を使うことは出来ていません。
例えば、拳を目標へ突き出したときに、拳という物体の重さが重力で下に落ちないように、肩のチカラで上に持ち上げながら突いてしまう。
拳が重力で下に落ちる力を、肩のチカラで上に持ち上げることで、重さを相殺してしまいます。
この突きの使い方でも「重さ」を使うことはできていません。
最初の段階では「拳と上腕の重さ」を使う
腰に拳を構えた時に、「肘から先の前腕と拳を一つの重り」として使います。
肘から先の重さを肩のチカラで堪えるのではなく、肩からぶら下がっている感覚。
イメージとしては、「振り子の重り」が肩からぶら下がっているイメージ。
肩からぶら下がっている「前腕と拳という重さ」を目標へ「ぶつける」イメージで突き出します。
肩や腕の筋力だけに頼るのではなく、身体全体で発生させたチカラで「前腕と拳の重さ」を「ぶつける」のです。
突きに伝えられる身体の重さはたくさんある
突きに伝えられる人間の体の「重さ」は一つではありありません。
『肩甲骨から先を使う』
肩甲骨、上腕、前腕、拳を胸鎖関節で動かす
『腰の回転の重さを突きに伝える』
腰の半身、正面
『丹田の重さを伝える』
移動基本などの重心移動
身体というさまざまな部位を動かすことで、得られた運動エネルギーを拳に伝えることが大切です。
「肩や腕のチカラだけ」で拳を押し出すのではなく、身体という様々な「重さ」を移動させることで得られた運動エネルギーを目標へ「ぶつける」ことで、突きの威力を上げることができます。
突きの威力を上げるためには、拳は頑張らない
例えば、ボウリングの玉が転がるときには、ボウリングの玉にエンジンが付いているわけではありません。
ましてや、ボウリングの玉に筋肉が付いていて、自らの筋力で動いているわけではありません。
人間という身体から発生させたチカラを、ボウリングの玉に伝えることで転がっていくのです。
「突き」という拳を突き出す行為とは、拳を頑張らせるのことではなく、「拳以外の身体で発生させた運動エネルギー」を拳へ伝えることが私たちか稽古している空手の身体の使い方になります。
三千回の逆突きの練習で分かったこと(2022.1追記)
先日の一人稽古で、逆突きを三千回やってみました。
吊るした紙を目標にして、拳が紙を突いた音が「ピシッ!」とすることが最低の基準。
(片足を前へ踏み出した「前屈立ち」という立方で、片方の突きを連続100回✕左右を15セット。1時間位。)
目的は、「本当に肩のチカラを使わずに突きは出来るのか」を検証すること。
(もう一つの目的は、三千回という回数で自分のメンタルを鍛えること)
特に下半身のチカラを体幹に伝え、拳や前腕を「一つの重り」として突き出すことを重点的に意識する。
- チカラを発生させるエンジンは「下半身」
- 発生させたチカラをロス無く伝え、拳をコントロールする「体幹」
- 「拳と前腕という一つの重さ」を体幹に吊るしているロープのような「肩」や「上腕」
腰に構えた拳は、体幹でチカラの方向をコントロールしているので、肩や上腕にチカラを入れる必要はありません。
逆に無駄なチカラをを抜くことで、下半身から発生した大きなチカラをロス無く拳へ伝えることができました。
今回の検証は「鍛錬」ではなく「チカラのコントロール」でしたので、筋肉痛も若干の背中のこわばりがあっただけでした。
これだけの数の練習をこなしても肩や腕に筋肉痛が発生しなかったということが、肩や腕のチカラに頼らなくてもよいという一つの検証結果になりました。
(突きの回数をこなすうちに無駄なチカラが抜けてくことが何度も実感でき、「回数を重ねることに突きが成長する実感」の方が強くなってしまいました。メンタルを鍛えるというより、検証や成長感の方が強く、楽しんでいたという感じのほうが強かったです。笑)
あとがき
まとめ
- 突きのスピードが同じであれば、突きの重さが大きいほど運動エネルギーを大きくすることができる
- 肩からぶら下がっている「前腕と拳という重さ」を目標へ「ぶつける」イメージで突き出す
- 「肩や腕のチカラだけ」で拳を押し出すのではなく、身体という様々な「重さを移動させることで得られた運動エネルギー」を目標へ「ぶつける」ことで、突きの威力を上げることができる
- 「突き」という拳を突き出す行為とは、拳を頑張らせるのことではなく、「拳以外の身体」で発生させた運動エネルギーを拳へ伝える
「空手に奥義無し」
という言葉があります。
「これだけやれば最強の技が得られる」という完璧な処方箋は空手にはありません。
小さなことの積み重ねが大きな力を生むのです。
今回紹介したものも一つの方法論であり、これが突きの威力を上げる方法の全てではありません。
ひとつひとつの方法論は簡単であっても、積み重ねることによって『誰でもできること』が『積み重ねた人にしかできないこと』になっていきます。
たくさんの稽古から得られた技術を一つの突きに集約する。
「一撃必殺」という、ひとつの技に賭ける空手道の精神性に私は魅力を感じ稽古をしています。
空手道には、まだまだ面白いことがたくさんある!