この記事はこんな方におすすめ
- 「突き」を真っすぐに出せるようになりたい
- 「突き」が短いと言われている
突きという動作には、関節を連動させる「タイミング」が大切です。
そして、普段あまり意識したことのない「〇〇関節」も関係しています。
この記事が少しでも、皆さんの「突き」をレベルアップさせることができる一助になれば幸いです。
この記事では分かりやすくするために『基本的な中段突き』に限定して説明します。
目次
この記事を見る前に理解しておきたい知識
空手で使う腕とは
空手の突きの動作に大きな役割を果たす「腕」。
という方が多いと思います。
しかし、空手に使う腕とは、「胸と鎖骨の付け根から先が腕」なのです。
胸と鎖骨の付け根の関節は「胸鎖関節」といわれ、この関節が突きに大切な動作を与えます。
(詳しくはググってください。笑)
関節が一つだけの動作は、円運動
中段突きに関係する主な関節
- 腰の関節
- 肩の関節
- 肘の関節
- 胸鎖関節(後ほど説明をします)
厳密には、細かい部分が他にも連動しているかもしれませんが…。
理解いただきたいことは、関節が一つだけ動くということは、「円運動」になるということ。
実際に試してみればわかりますが、
- 肘だけを伸ばしたり(伸展)曲げたり(屈曲)する動作は、拳は肘を軸した円運動。
- 肩だけを軸にした腕の動作では、拳は肩を軸にした円運動。
今回の技は「直突き」。
腰に構えた拳を最短距離で真っすぐに、中段という目標へ突き出す動作。
関節を単体で動かせば円運動になる運動を、複数の関節を連動させることで「直線運動」に変換させることが大切なのです。
胸鎖関節とは
肩か体の中心に向かい、鎖骨と胸骨のつなぎ目の関節を『胸鎖関節(きょうさかんせつ)』といいます。
この胸鎖関節を動かすことができれば、鎖骨が動くようになります。
この胸鎖関節を使い、鎖骨を後方へ動かすことを意識して引き手を腰にとれば、胸が開き十分に引くことができます。
突き出す動作で鎖骨を動かせば、背中を開くように十分に押し出すことができます。
鎖骨と肩甲骨は連動しています。
個人的な感覚ですが、引き手の時は鎖骨を後方へ、突きのときは肩甲骨を開くように使うと、十分な胸鎖関節の動作を得られます。
関節を増やすと、移動距離が大きくなる
関節が曲がったり伸びたり、関節を軸に回転したりするということは、腕や拳など身体が動くということ。
動作に必要な関節が十分に動くということは、動作を大きくしたり、加速させることができます。
車が加速するには、移動距離を長くした方がスピードを上げることができるように。
(最終的には、空手の突きは初速から最大のスピードを得られるように使います。)
しかし、「オーバーモーション」と「大きく使う」ことは、全く違う動作です。
遠回をりして必要のない動作で加速をしても、それは遠回りした分だけ『遅く』なります。
『突き』に必要な移動距離を、『最短距離』で『最大』に使う事が、突きの移動距離を大きくし、技を速くさせることなのです。
突きの動作での『関節の使い方』
腕の運動
腰に構えた拳を目標に突き出す行為は
- 肩の関節
- 肘の伸展
この二つの関節を連動させることにより、拳を真っすぐ目標へ移動させることはできます。
しかし、この二つの関節を使っただけでは突きの移動距離が短く、大きな威力を得ることはできません。
腰の回転
松濤館流の特徴として、腰を半身、正面に向ける動作。
腰を回転させる動作から発生する力を、技に伝えることができます。
前屈立ちで腰を半身に拳を腰に構え、腰を正面に向け、中段突き。
腰を半身から正面へ回転させる力を体幹に伝え、拳へ伝えます。
たぶん、この記事を見ている方の多くは、肩の関節、肘の伸展に併せて、腰の回転の3つの関節の円運動を連動させ、拳を直線的につかえるように稽古していると思います。
3つの関節の円運動を踏まえたうえで、胸鎖関節を使う
腰の回転、肩の関節、肘の伸展この3つの関節の円運動を連携させることができたら、さらにレベルアップさせていく。
先ほど説明をした『胸鎖関節』。
突きの準備動作として拳を腰に構えたときには、拳は身体の真横に位置します。
この状態で、胸鎖関節を使い、鎖骨を後方へ引く。
すると、拳や肩の位置が体側から少し後方へ移動します。
拳を突き出す時には、胸鎖関節、肩関節、肘の伸展を連動させ、拳を真っすぐ大きく動かす。
『肩から先が腕』ではなく、胸と鎖骨のつなぎ目である『胸鎖関節からから先が腕』のイメージ。
肩の関節と肘の伸展の動作に併せて胸鎖関節を使う事で、突きの移動距離を大きく使うことができます。
『前屈立ちで腰を半身に構えたところから、腰を正面向けて逆突き』を例にすると、
- 腰の回転力が体幹を伝わる。
- 体幹への力が胸鎖関節に伝わり鎖骨が前へ動く。
- 鎖骨から力が肩関節に伝わり、上腕が押し出される。
- 上腕の押し出しと、肘関節の伸展で、前腕が押出される。
この『4つの関節の円運動』を絶妙に連動させることで、腰から発生する上半身の力を余すことなく使い、拳を真っすぐに、必要な移動距離を最大に使い、拳を目標へ突き出すことができます。
何度も試すことが大切
自分の身体でタイミングを掴む
技に連携する関節が増えるほど威力やスピード、移動距離を増やすことはできますが、それは「関節を絶妙に連携させるこができれば」のはなし。
連携させる関節が増えるほど、間違った使い方をすれば、逆に突き出す動きの弊害になることも。
- 腰の回転に胸鎖関節の動きが遅れれば、突き出す角度が外に向いてしまう。
- 肩の関節の動作に肘の伸展が遅れれば、突きが上にいってしまう。
- 腰の回転に胸鎖関節を使えていなければ、突きを振り回してしまい、胸や肩で引っ張ってしまう。
必要な移動距離を『最短距離』で『最大』に。
そして、直線的に突き出せる『関節を連動させるタイミング』を探し出すことが大切です。
ほんの少しのタイミングのズレが、技のブレになり、その『微妙な差』が『大きな差』となります。
何度も何度も試して、自分の身体でタイミングを掴んでください。
応用のサイクル
前屈立ちで培った関節の使い方を、自然体立ちに応用させる。
前屈立ちでの半身、正面の上半身の関節の使い方を、自然体立ちの小さな動きに応用させる。
さらに、自然体立ちの小さな動きの使い方を、前屈立ちの大きな動きに応用させる。
- 大きい動作で学び、小さく速く使う。
- 小さく速くした動きを、大きな動作に応用し、大きく速く使う。
- 大きく速く使う動きを、小さな動きにさらに応用させる。
この応用のサイクルが、さらに技をより良くさせていきます。
追加のポイント
前腕の回転
前腕の回転(肘から手首まで)も突きに必要な動作。
4つの関節の円運動に、前腕の円運動を連動させること。
あとがき
ポイントのまとめ
- 胸と鎖骨の付け根(胸鎖関節)から先を『腕』として使う。
- 関節を単体で使うと円運動になる運動を、複数の関節を連動させることで「直線運動」に変換させる。
- 『4つの関節の円運動』を絶妙に連動させる。
- 直線的に突き出せる『関節を連動させるタイミング』を探し出す。
注意すること
突きの準備動作で拳を腰に構えたとき、
- 鎖骨や肩甲骨を意識すると、肩に力が入りリキミになる。
- 肩の力を抜き、腰から発生した力を拳に伝えること。
言葉や文字で伝えられることには限界があります。
何度も試し、自らの身体に体得させていくことが大切です。
空手道は修行を通じ、自らの実践の体験による汗の中から捉えなくてはりません。
「不立文字」。
空手は学ぶことや、成長させてくれること、楽しむことでいっぱいである。
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