空手技術

【空手道稽古持論 技術】強い攻撃を防御できる受け技のカタチ 「肘の位置」

空手には「受け」という技があります。

松濤館流の基本の受け技の代表的なもの

  • 上段(顔面部)への攻撃を上へ跳ね上げる「揚げ受け」
  • 中段(胴体部)への攻撃を外側から内側へ横に払う「外受け」
  • 中段への攻撃を内側から外側へ横に払う「内受け」
  • 下段(下腹部)への攻撃を斜め下へはじき落とす「下段払い」

受け技ごとにはカタチがあり、腕や拳の角度や位置が大切です。

受け技ごとのカタチの規準になるものの一つとして「肘の位置」が大切になります。

一般的には、受け技の肘の位置は、脇腹から一握りから一握り半といわれています。

なぜ、肘の位置が脇腹から拳一握りから一握り半なのでしょう。

「肘の位置」を理解することで受け技の理解度を深め、受け技をより良くすることができると思います。

(写真の受け技は肘の位置が悪いですね…笑)

肘の位置

肘は密着させた方が強いけど…

腕は、肘と腕を体に密着させた方が強く使う事ができます。

イメージとしては、腕相撲。

肘や腕が体から離れるほど力が弱くなり、密着させるほど強く使えます。

空手の受け技も、肘や腕が体に密着している方が「強さ」という面ではいいかもしれません。

しかし、受け技は「強い」ということ併せて、「攻撃を防御する」という目的があります。

肘や腕が体に密着するほど「強く」はなるかもしれませんが、体に近い場所で防御をすることになり、攻撃を食らってしまう可能性が高くなります。

受け技が弱くならずに、相手からの攻撃を防御できる位置。

それが、肘の位置が脇腹から拳一握りから一握り半の位置になり、最適な位置なのです。

脇の締めで受ける

例えば右手で受ける「外受け」。

受けの動作は、右腕を右耳の横へ構え、体の外側から内側へ前腕を内転させることで、攻撃を横に払います。

ここで大切なのは、肩の力だけで腕を動かすのではなく、脇の締めで受け技を行うこと。

強い力を発揮できる肘の位置(脇腹から拳一握りから一握り半の位置)へ脇を締め込む。

最終的に受け技の肘の位置を決める脇の締め。
この、締め込む力を使って受け技を行うことが重要になります。

受け技のカタチ(右腕の受け技を例に)

外受け、内受け

肘の位置は、脇腹から拳一握りから一握り半の位置。

拳の高さは、右肩の高さ。右体側の前。

肩の力だけで受け技を行うと、肩が上がってしまい、肘の位置も高くなってしまう。

結果、前腕の角度が水平に近くなり、攻撃を腕で受けにくくなってしまう。

脇を締めることにより肩と肘が下がります。
拳を肩の高さにしても前腕を立てることができ、攻撃を腕で受けやすくなります。

ポイント

脇を締めることで肩と肘が下がり、前腕を立てることができる。

下段払い

下段払いは位置が高くなってしまいがち。

かといって、「体から○○cm離す」ということではありません。

内受けや外受けと同じ脇の締めで、肘を脇腹から拳一握りから一握り半の位置へ。

肘の位置で前腕の角度が決まるので、その延長線上へ前腕を伸ばす。
前腕を右体側まではじき落としたた位置が下段払いの位置。

ポイント

脇の締めで肘の位置を決め、肘の位置で下段払いの角度と位置を決める。

揚げ受け

揚げ受けは、上記の受け技とは肘の位置は異なります。

だいたい、右耳の前あたりへ肘を決める。

前腕は額前に拳一握り位の位置へ。

外見上は脇が空いているように見えますが、体の中では脇を締めているのです。

外受けや内受け、下段払いと同じように脇を締めて、肘を右前に決めます。

実際に揚げ受けを上から押さえつけてもらえばわかりますが、脇を締めた時と緩んでいる時では、揚げ受けの強さは段違いです。

ポイント

他の受け技と同じように脇を締めて、肘を耳前に決める。

受け技の脇の締めは全て同じ

結果として、肘の位置という表現になりますが、大切なことは脇の締め込みで肘の位置を決めること。

強い攻撃に負けないような肘の位置へ、脇の締め込みで受ける。

人それぞれ体の大きさや腕の太さ、拳の大きさが違うように、受け技のカタチも人によって微妙に違います。

肘の位置が体からどこになければならないではなく、強い受け技になる位置へ脇を締め込むことにより、肘の位置が決まります。

結果として肘の位置が脇腹の前へ拳一握りから一握り半の位置になり、それが正しい位置になるのです。

正しい指導者ならば、見れば分かるものです。

実際に受けてみる

相手からの強い攻撃を実際に腕で防御してみると、脇が緩く弱い技では受けきることができません。

強い受け技でなければ、跳ね上げたり、払ったり、はじき落とすことはできません。
(ここでは、基本的な受け技を説明しているので、流したり、押さえつけたりする応用的な受け技は別な話になります。)

実際に強い攻撃を「肩の力」だけの受けても、受け負けてしまいます。

脇の締め込みにより肘の位置が正しく使えれば、下半身、胴体、腰の力が集約され、受け技に伝えることができます。

受け技の拳の位置が「体から○○cm」ではなく、強い攻撃を受けることができるように脇を締め込み、肘の位置を決めることにより、おのずと受けのカタチが決まるのです。

脇を締める受けは他にも、手刀受け、打ち落とし、底掌横受け、巻き落としなどたくさんあります。

実際に受けてみて、脇の締め込み方や、肘の位置を確かめてみましょう。

あとがき

受け技は、肘の位置を脇腹の前に決めることが目的ではありません。

形(かた)を演じるために受けのカタチがあるわけではなく、強い攻撃を防御するために受け技があり、強く受けるためのカタチがある。

その強い攻撃を防御する「受け技」の身体の使い方を、形(かた)で稽古し、形で表現をするのです。

目的と手法をしっかりと区別し、技を理解し、学び、稽古しましょう。

 

空手道は、学ぶことや面白いことでいっぱいである!

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